電気伝導度(EC)は堆肥の品質に影響を与えます。堆肥には水溶性イオンが含まれており、この含有率によって、作物の成長に影響を及ぼします。このページでは、電気伝導度(EC)の説明のほか、高濃度堆肥の浄化方法についても解説します。
電気伝導度(EC)とは「どのくらい電気を通すか?」という指標です。堆肥には「塩類」と総称されるカリウムやナトリウムなどの水溶性イオンが含まれています。塩類には電気を通す性質があるため、堆肥の塩類濃度計測に電気伝導度(EC)が採用されています。
電気伝導度(EC)は肥料取締役法の基準には定められていませんが、多くの農家が堆肥品質の指標としています。ECの単位はジーメンス毎メートル(S/m)で、推奨基準は「5.0 dS/m 以下」といわれています。
堆肥における電気伝導度(EC)が高いと、その分、塩類が多く含まれていることが分かります。堆肥に塩類や無機養分が過剰に含まれると、作物の生育障害が生じます。例として、キャベツ、白菜、ほうれん草などの根菜類では、ECが「1.0~1.5」を上回ると発芽が悪くなります。
耕種農家はECの高い堆肥を敬遠しており、堆肥の中でも比較的ECが低い「牛ふん堆肥」を採用する傾向があります。しかし、最近では牛ふん堆肥でもECが高くなる傾向が確認されています。原因として「肥料のやりすぎ」「連用による高濃度化」が挙げられます。
ハウス栽培の場合、降雨の影響がないため、何回転も連用することで、知らずのうちにEC値が高くなっている場合があります。EC値が高いという理由で窒素を減肥すると、窒素欠乏で生育を悪くしてしまいます。ECは堆肥品質の指標ではありますが、EC値だけを過信することのないよう、窒素成分にも気を配ることが必要です。
堆肥の電気伝導度(EC)を下げる最も簡単な方法は、野積みにして雨に晒すことです。堆肥に水分を含ませ、塩類を洗い流すことで、塩類濃度を下げることができます。ただし、この方法は地下水の汚染につながることから法律で禁じられています。雨ざらし以外の現実的としては「吸肥力の高い作物を植える」という方法が挙げられます。
キュウリやスイートコーンがその例です。これら吸肥力の高い作物は、除塩用作物であり「クリーニングクロップ」と呼びます。他には「稲わらを分解する微生物に硝酸態窒素を取り込ませる方法」「表層土を剥がす」「深耕して下層の土壌と混ぜ合わせて濃度を薄める(天地返し)」「ハウスの土壌に雨を含ませる」などの方法も挙げられます。
いずれも作物の栽培スケジュールや、コスト、手間を考えて、適切な方法を選択しましょう。可能であれば、土壌分析を行いながら徐々に堆肥を減らしていく(減肥)手段が最も確実な方法です。畜ふん堆肥を連用している場合は、使用を休止することも有効です。
作物を育成している段階でEC値が気になる場合は、土壌が乾燥しすぎないよう土壌水分含有率を高めにすることで、塩類等の濃度を下げる方法も候補といえます。
堆肥化を行う方法は、撹拌に機械を使う方法(密閉・開放)、堆肥舎で堆積する方法の2種類、3タイプ。
どの方法が適しているかは、何を重視するかで異なります。
断熱密閉された円形の発酵槽を使用し、全自動で撹拌作業を行い、堆肥化させる方式
発酵⽇数 (⼀次処理) |
10⽇〜16⽇ |
---|---|
施設 必要⾯積 |
⼩規模 |
臭気 対策 |
◎ 容易 |
適⽤ 畜種 |
養豚・養鶏 (酪農) |
初期投資 費⽤ |
⼤ |
材料を定期的に機械で撹拌し、少しずつ移動させながら堆肥化させる方式
発酵⽇数 (⼀次処理) |
30⽇〜60⽇ |
---|---|
施設 必要⾯積 |
中規模 |
臭気 対策 |
△ 難しい |
適⽤ 畜種 |
養豚・養鶏 (酪農・肥育牛) |
初期投資 費⽤ |
⼤ |
ショベルローターなどを運転して切り返しを行い、長時間の堆積で堆肥化する方法
発酵⽇数 (⼀次処理) |
30⽇〜90⽇ |
---|---|
施設 必要⾯積 |
大規模 |
臭気 対策 |
△ 難しい |
適⽤ 畜種 |
酪農・肥育牛 (養豚) |
初期投資 費⽤ |
少 |
堆肥を探している耕種農家さんと堆肥を使って欲しいコンポユーザーさんを繋ぐマッチングサイトをはじめ、堆肥のペレット化のメリット、省スペースで設置が可能なおすすめマシンを紹介します。