食糧を生産するために欠かせない堆肥は、地球の気候変動を引き起こす「温室効果ガス」との関連性が少なくないとされています。どのような影響を与えるのかについてまとめました。
温室効果ガスとは、化石資源の大量消費などで発生する二酸化炭素ガスが熱エネルギーを閉じ込める作用(温室効果)を指す言葉です。温室効果を引き起こすものには二酸化炭素・メタン・フロン・亜酸化窒素などが挙げられます。
温室効果ガスは、本来地球の表面温度が冷えすぎないようにするための役割を持っていますが、近年人類の活動が活発化したために地球規模で温室効果ガスの濃度が高まり、大気中に大量の熱が吸収され、温暖化と呼ばれる気温上昇が進んでいます。
地球全体の気温上昇は、北極や南極にみられる氷河の融解、海面上昇を引き起こすほか、異常気象の原因になるともいわれています。
肥料を生産する堆肥化には、好気性発酵と嫌気性発酵の2種類があります。
酸素を使って微生物が分解を行う好気性発酵では亜酸化窒素が、酸素を使用せず発酵を進める嫌気性発酵ではメタンが発生するため、どちらの方法でも温室効果ガスの発生は避けられない状況です。
家畜ふんの堆肥化過程では、温室効果ガスの一種である一酸化二窒素が発生していることから、そのプロセスを見極める必要がありました。
岡山県総合畜産センター環境家畜部環境衛生科では、堆肥化の過程で発生する物質の抑制には、「好気的な条件を作り出すこと」と、「水分を適正な量に調節すること」の2点が重要と結論づけています(※1)。
鳥取県農林水産部農林総合研究所では、一酸化二窒素の発生を抑制するには、亜硝酸酸化細菌を添加することで、一酸化二窒素の削減が可能という結果となりました(※2)。
対策として、好気的な条件と適切な水分量の調整を行うために、酸素を含ませる「切り返し」を実施したところ、メタンの発生量が低減。亜硝酸酸化細菌を添加した試験でも、堆肥化2週間後の添加で一酸化二窒素の揮散が抑制できる結果となりました。
帯広畜産大学地域環境学研究部門が2010年に行った「温室効果ガス(N2O)の排出を抑制する堆肥化システムの実証開発」では、一酸化二窒素が堆肥化の過程で多く発生している点に着目し、実規模堆肥舎に適用するための一酸化二窒素排出抑制型システムを開発し、その効果を確かめました。
堆肥舎用の通気量自動制御システムを開発し、帯広畜産大学内の切り返し式堆肥舎へ設置したところ、対照比較用の槽と比較して約23%一酸化二窒素の排出量が減少しました。システムの制御値を適切に設定することで、一酸化二窒素がさらに抑えられる可能性も見いだされました。
研究の結果、一酸化二窒素の削減には切り返し式の堆肥生産方式に通気量の制御が有効であること、通気量の制御によって発酵が促進されたことなどが判明し、将来の堆肥化プロセスにおける温室効果ガス削減に役立てられる可能性があります。
堆肥化を行う方法は、撹拌に機械を使う方法(密閉・開放)、堆肥舎で堆積する方法の2種類、3タイプ。
どの方法が適しているかは、何を重視するかで異なります。
断熱密閉された円形の発酵槽を使用し、全自動で撹拌作業を行い、堆肥化させる方式
発酵⽇数 (⼀次処理) |
10⽇〜16⽇ |
---|---|
施設 必要⾯積 |
⼩規模 |
臭気 対策 |
◎ 容易 |
適⽤ 畜種 |
養豚・養鶏 (酪農) |
初期投資 費⽤ |
⼤ |
材料を定期的に機械で撹拌し、少しずつ移動させながら堆肥化させる方式
発酵⽇数 (⼀次処理) |
30⽇〜60⽇ |
---|---|
施設 必要⾯積 |
中規模 |
臭気 対策 |
△ 難しい |
適⽤ 畜種 |
養豚・養鶏 (酪農・肥育牛) |
初期投資 費⽤ |
⼤ |
ショベルローターなどを運転して切り返しを行い、長時間の堆積で堆肥化する方法
発酵⽇数 (⼀次処理) |
30⽇〜90⽇ |
---|---|
施設 必要⾯積 |
大規模 |
臭気 対策 |
△ 難しい |
適⽤ 畜種 |
酪農・肥育牛 (養豚) |
初期投資 費⽤ |
少 |
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